ソラ(仮)
「あ…」



有沙は、窓の外から唯へと視線を移す。



「あたし、お金ない」



「…はあ?」



「今、気付いた。鞄置いてきたから、財布もないや」



そう、財布は鞄の中。



ポケットには1円だって入っていない。



変なところ几帳面で、お金は全て財布で持ち歩く。



なのに鞄を持ち歩く習慣はきちんとついていなくて、今手元にあるのは携帯のみ。



唯は、そんな有沙にため息をついてみせる。



「…そういうことは注文の前に言えよ」



「だって、気付かなかった」



「………」



はぁーっ、とさっきよりも深くため息が出る。



そっちが、急にファミレス連れてくるからだっての。



有沙は、そう言おうとする言葉を飲み込む。



どっちにしたって間抜けな状態だ。

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