ソラ(仮)
唯と別れて、家に帰ってきた有沙は玄関の前で立ち止まる。
なんだか、玄関の扉がやけに厚いような気がする。
…嫌な予感が頭をよぎる。
怒ってんのか…。
はぁー、とその場でため息をつくと、
鞄からイヤホンを取り出し、それを携帯に繋げて音楽を鳴らす。
意を決して、ドアを開けて足下を見ると
案の定女物のパンプスが一足ある。
「やっぱり、怒ってんのか」
呟いた自分の声さえも聞こえないほどに、音量を上げている。
有沙は静かに玄関を閉めると、脱いだローファーは手に持った。
それから忍ぶようにして自分の部屋まで行き、ベッドに倒れ込む酔うに転がった。
そのまま、音がしないようベッドの下にローファーを下ろし、目を瞑った。
聞きたくなかったのは、甲高い女の声。