この言葉の、その先は、
両家の挨拶が終わり、運ばれてきた料理を嗜みつつ和やかなムードで進むお見合い
とは言っても話が盛り上がっているのは大人たち
当の本人達が直接言葉を交わしたのは最初の挨拶の時だけ
あとは時折振られるこちらへの質問に対して答える程度
成仁さんの方を見るもこっちには視線もくれず、笑顔で私を挟む叔父と母に交互に視線をやるだけ
あーさっきのかなー
必死な形相で靴に手を伸ばす女
きっと彼への第一印象はそこまで……かなり良くないものだった
こりゃダメだな
正座している足が痺れてきたのも相まって、どこか自暴自棄になっていた
元々乗り気じゃなかったお見合いだから
そう理由付けて、私は1番期待していたこの料亭の料理を楽しむことにした
鼻からここの料理を食べたいがために決めたお見合いみたいなもの
時折私に言葉を掛けてくれる相手方のご両親に笑顔で対応しつつ、私は目の前の大海老を食すことに集中した
一通りの料理を嗜み、会話も終わりが見え始めた頃、お見合いではお決まりのあとは若い者達でっていう雰囲気になった
とりあえず場所を移すことになって、母と叔父、そして向こうのご両親は近くのホテルにあるバーへと行くらしい
それぞれが帰る準備を始めて部屋から出て行く時、母に腕を引かれた
「さっきの態度は何?」
「すみませんあまりにもご飯が美味しくて」
「ふざけなくて良いから。説教は後で。ちゃんとお話するのよ」
母からの圧にペコペコしつつ、ふいと成仁さんに視線を向けた
相変わらず交わる事はない視線に、彼に未だ良い人っていうラベルを私は貼れない
母の運転する車で大人達は颯爽と料亭から走り去っていった
取り残されたのは2人
大変気まずい
料亭の玄関の正面
成仁さんと並んで小さくなっていく白の車を目で追った
その車も見えなくなった頃、ふいに成仁さんが言葉を発した
「行きましょうか」
「……はい」
挨拶以降、二回目の会話らしい会話
それもたった二言で終わり
相変わらずまともに視線は交わらず、私は先を歩き出した成仁さんの2歩後をトボトボと着いていった
成仁さんの背中に視線をやる
ピンと伸びた背筋に広い背中
そこまで身長は高くないけれど、その堂々とした姿は彼を大きく見せた
スーツが似合う男性は良い
そうは思うも、素直にこの状況を喜べないのは自分