*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 
 千紗子さんが淹れ直してくれた紅茶を一口飲む。
 さっきとは違う茶葉で甘めのミルクティ。それと一緒に、滲みそうになった何かを飲み下した。
 紅茶の甘さは千紗子さんの優しさだ。


 「宮野さんは、彼が御曹司じゃないほうが良かった?」

 それまで黙っていた雨宮さんが、突然そう言った。
 
 それはとても静かな口調で。
 そして真摯な瞳が私を真っ直ぐに見つめている。

 「そんなこと、考えたこともありません。」

 スルリ、と言葉がこぼれ出た。
 それは何の混じりけもない、私の本心だった。

 「御曹司だとか、御曹司じゃない、とか関係ないです。どっちでも修平さんは修平さんだから……。」

 「そうか。」

 雨宮さんはそれだけ言うと、これまでで一番柔らかく優しげな顔で微笑んだ。

 「じゃあ大丈夫だな。」

 「えっ?」

 「彼なりに抱えていることがあるのかもしれないけど、お互いが素直になって自分の気持ちを話し合えば、きっと大丈夫。」

 ニコニコと微笑みながら雨宮さんはそう言うけれど、私はどうして『大丈夫』だと言い切れるのか分からずに、瞬きを繰り返す。

 「ま、彼の気持ちが分からないでもないけどな。」

 「それってどういう…」

 独り言のように小さな声で呟いた言葉の意味が分からずに、雨宮さんに聞き返す。
 けれど、彼は「ふっ」と息を吐くような笑いを漏らしただけで、何も答えてくれない。無言で微笑んでいるだけだ。

 「瀧沢さん、早く帰って来たらいいわね。」

 そう言ってくれた千紗子さんに、私はただ頭をコクンと上下させた。



< 107 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop