*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
千紗子さんが淹れ直してくれた紅茶を一口飲む。
さっきとは違う茶葉で甘めのミルクティ。それと一緒に、滲みそうになった何かを飲み下した。
紅茶の甘さは千紗子さんの優しさだ。
「宮野さんは、彼が御曹司じゃないほうが良かった?」
それまで黙っていた雨宮さんが、突然そう言った。
それはとても静かな口調で。
そして真摯な瞳が私を真っ直ぐに見つめている。
「そんなこと、考えたこともありません。」
スルリ、と言葉がこぼれ出た。
それは何の混じりけもない、私の本心だった。
「御曹司だとか、御曹司じゃない、とか関係ないです。どっちでも修平さんは修平さんだから……。」
「そうか。」
雨宮さんはそれだけ言うと、これまでで一番柔らかく優しげな顔で微笑んだ。
「じゃあ大丈夫だな。」
「えっ?」
「彼なりに抱えていることがあるのかもしれないけど、お互いが素直になって自分の気持ちを話し合えば、きっと大丈夫。」
ニコニコと微笑みながら雨宮さんはそう言うけれど、私はどうして『大丈夫』だと言い切れるのか分からずに、瞬きを繰り返す。
「ま、彼の気持ちが分からないでもないけどな。」
「それってどういう…」
独り言のように小さな声で呟いた言葉の意味が分からずに、雨宮さんに聞き返す。
けれど、彼は「ふっ」と息を吐くような笑いを漏らしただけで、何も答えてくれない。無言で微笑んでいるだけだ。
「瀧沢さん、早く帰って来たらいいわね。」
そう言ってくれた千紗子さんに、私はただ頭をコクンと上下させた。