*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 
 「えっ、今なんて…?」

 「やっぱり杏奈には敵わない、って言ったんだ。」

 顔の半分を手で覆った修平さんは、まるで私の視線から逃れるように顔を背けたままだ。

 「……修平さん?」

 私は彼のすぐ隣に同じようにしゃがみ込んでみた。ドレスの裾が床につかないように足の上に何とか乗せる。
 そうして彼の次の言葉をじっと待った。

 しばし黙ったままだった修平さんは、「は~~~」と大きな息を吐き出すと、ポツリポツリと話し出した。

 「怒ってたわけじゃない……正直、驚いたけど。」

 「だ、だよね……」

 「壇上で杏奈の姿を見付けた時は心臓が止まるかと思ったし。お陰であのスピーチで何を話したかなんてほとんど覚えてない……。」

 思いも寄らないカミングアウトに、私は言葉を失う。

 (あんなに堂々とスラスラ話してたのに!?)

 そう思ったけれど、彼を驚かせてしまったことは申し訳ないと思う。

 「ご、ごめんなさい…嘘ついて黙って来てしまって。」

 「いや、それは怒ってないから大丈夫。どうせ葵が仕組んだんだろ?」

 「えっ!どうしてそれを!?」

 「あいつが企みそうなことだからだよ。俺に内緒で杏奈を連れて来て、俺が驚く顔が見たかったんだと思う。」

 修平さんの答えに納得。
 今日は仕事中のクールな遥香さんだったけれど、プライベートの彼女が少し悪戯好きで茶目っ気のある性格なのは承知済みだ。
< 205 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop