*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
 「どうしたの!杏奈!」

 大きな声を上げた私に、修平さんが何事かと慌てて立ち上がる。

 それを両手で「まあまあ」と宥めるような手つきをした葵さんが

 「私の名前が『戸部遥香』だって言ったら、びっくりしちゃっただけよね、杏奈ちゃん。」

 開けたままだった口をキュッと引き結んで、コクコクと素早く頭を縦に振る。

 「修平くん、教えてなかったの?」

 「いや、ケンから電話貰った時に、『来たいって言ってるのは、同僚の葵と、その夫で俺の高校からの友人だ』、て説明したけど?」

 「あ…」

 頭の中にその時の光景が甦った。

 確かに『同僚の葵』と説明を受けた時、修平さんがもう一人のお友達の説明を話していた気がする。
 すっかり葵さんに気を取られて、その後の話が頭に入ってこなかったんだ。

 「ごめんなさい。私の聞き漏らしだと思います。」

 「別にいいぞ。俺が遥香の旦那でもそうじゃなくても、シュウの友人としてここに遊びに来たことには変わりないからな。」

 大きな体から発せらせる低い声が、そう言って私のことをフォローしてくれる。

 (戸部さん、優しい方だなぁ。)

 そのあまりに見た目から、なんとなく怖がっていた自分が恥ずかしくなる。

 「ありがとうございます。」

 控えめにそう言うと、「どうも。」とそっけなく返されたけれど、その目が温かくて、私の言葉を受け入れてくれていることが伝わってきた。

 (修平さんのお友達は優しい方ばかりなんだな。)

 それが分かっただけでも、今日二人に来て貰えて良かったと思える。
< 38 / 259 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop