*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!

 休憩を終えて仕事に戻ってからは、意識して業務に集中することに努めた。

 ただでさえイベント続きで忙しい上に、連休の為来館者も多い。
 イレギュラーな仕事に加えて、蔵書整理や利用者からの問い合わせなどの通常業務も同時進行なので、ハッキリ言って少しも余計なことを考えている暇なんかない。

 普通にしていても、よそ見をする暇もないほど忙しかったけれど、更に自分で仕事を見付けては忙しく動き回った。
 迷子を見付けてその子の親御さんを探したり、パソコンを使った資料検索の仕方に悩んでいるご高齢の方に声を掛けたり、先輩がやろうとしている片付けの肩代わりを申し出たり、一時だって立ち止まらないくらいに、自分で仕事に向かって行った。

 
 「杏ちゃん、大丈夫?」

 返却された蔵書を書架に戻す作業をしていると、そっと隣に来た千紗子さんが私にそう尋ねた。

 「え?」
 
 手元の本から千紗子さんの方に視線を移すと、心配そうに私の顔を覗き込む顔がある。

 「午後からの杏ちゃん、ちょっと頑張りすぎよ。」

 「そ、そうですか?でも今日はやることがいっぱいで…」

 私がそう言うと、千紗子さんは「う~ん」と少し考え込んでから、もう一度私に顔を向ける。

 「杏ちゃんはいつも一生懸命なところが良いところだと思うし、確かに今日はすごく忙しいわ。」

 そこで一旦言葉を切った千紗子さんは、私の目をじっと見つめる。

 「でも、今の杏ちゃんはなんだか無理をしてるように見えるの。空元気なんじゃないの?なにか心配事が有ればなんでも相談して欲しいわ。」

 ドキッとした。

 千紗子さんの言うことはまるまんま当たっていて、彼女に対して誤魔化しが効かないことを知る。

 「千紗子さん…」

 このまま私の中のモヤモヤを彼女に聞いてほしい、そんな気持ちが湧き上がる。
 修平さんのこととか、昼間の女性の話とか、胸の中に渦巻いている黒い靄を、彼女がきっと晴らしてくれるような気がして、私は口を開いた。

 「千紗子さん、あの、」

 「すみませ~ん、この本ってどこにありますか?」

 意を決して口を開いたそれと同時に、利用者の男性から声を掛けられた。

 「あ、はい。すぐに伺います。」

 そう言った千紗子さんは、私に小声で「また後でゆっくり」と呟いて、その男性の方へと歩いて行った。


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