*続*恩返しは溺甘同居で!?~長期休暇にご用心!
「…んな、あんな、杏奈。」
「えっ?あ、しゅ、修平さん?」
いつのまに戻ってきたのだろうか。私の目の前に修平さんが立っていた。
「どうかした?何度か呼んだけど気付かないし。」
彼の手がスッと差し出されて、私の頬に触れようとした、その瞬間。
私の肩がビックっと跳ね上がった。
「杏奈?」
「あ、ごめんなさい、えっと…午後からのイベントのこととか考えてて…」
「そっか。疲れてるんじゃない?顔色が良くないよ。」
「そうかな…、ちょっと眠たいけど、元気だよ。」
強張った頬を無理やり押し上げて、笑顔を作る。
そんな私を心配そうに見ながら、修平さんはスラリとしたその体を折り曲げて、私に顔を近付ける。
そしてさっき差し出したまま途中になっていた手で、私の頬をスリスリと撫でた。
ジッと私の様子を窺うように間近で見つめられる。
その綺麗な瞳の奥に見つめられると、心の中まで見透かされそうな気がして、私は彼の視線から目を逸らした。
「杏奈、やっぱり何か、」
「そっ、そろそろ行かなきゃ。休憩が終わる時間だからっ!」
修平さんの言葉に被せるように早口でそう言うと、少し目を丸くした彼は私の頬に当てた手をそっと下した。
私の言葉が建前であることに、なんとなく気付かれそうで目線を伏せると、今度は足元にいるアンジュと目が合った。
彼女は何か言いたげに私のことを見上げている。
(アンジュが何が言いたいのかも分からないよ…)
頭の中で、そんなことを思っていると、私の頭にポンっと温かい手が乗った。
「無理しないようにね。」
そう言って、その温かな手は私の頭をゆっくりと撫でる。
その温かさに、まぶたが熱くなって瞳が潤んでくる。
このまま下を向いてたら目から雫がこぼれそうだと思って、瞬きを三回してから勢いよく立ち上がった。
「ありがとう!でももうひと頑張りしてくるね!」
気持ちのスイッチを入れ替えるように少し声を張ってそう言うと、修平さんは驚いたように目を丸くした後、困ったように眉を下げた。
そして、私の肩をそっと抱き寄せてから背中をトントンと叩く。
「帰りも迎えに来るから。何かあったら連絡して。」
と耳元に口を寄せて優しく囁くと、そのまま私のこめかみにチュッと音を立てた。