クールな御曹司の甘すぎる独占愛

その後もあじさいかんの評判は上々。そのほかの商品もこれまでに比べて売れ行きはよかった。


「奈々さん、今日はいつもより残りが少なくないですか?」
「そうよね。今算出してみたけど、これまでの平均の廃棄ロス率が一ポイントも低いの」
「すごーい。奈々さんの新作がお客を呼んだんですね!」


明美はうれしそうに胸の前で手を組んだ。
サービスとして出すようになってから十日あまり。少しずつ動きが感じられ、奈々の心もわくわくしていた。


水瀬から奈々に連絡が入ったのは、翌々日の午後五時過ぎのこと。


《一時間後に店に行くから、すぐに出られるようにしておいて》


まだ仕事中なのだろう。低くくぐもった声だった。

水瀬は一泊の九州出張から今日の午後帰ってきたらしい。朝の十時に届いたメールには《これから飛行機に乗る》と書かれていた。

一時間後には水瀬と会えると思うと、自然と奈々の頬は緩む。奈々のご機嫌な様子に気づいた明美は「なにかいいことでもあったんですか?」と探りを入れてきた。

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