クールな御曹司の甘すぎる独占愛
◇◇◇
奈々が店のドアに鍵をかけたときだった。バッグの中でスマホが着信を知らせて音を立てる。取り出して見てみれば、花いかだの依子からの電話だった。
「はい、春川です」
《奈々さん、こんばんは。もうお店は終わったかしら?》
「今ちょうど帰ろうかと」
そう答えながら、奈々は鍵をバッグへしまう。
《今からうちに来られない?》
それは唐突なお願いだった。
「なにかうちの商品に不手際でもあったのでしょうか?」
そうだとしたら大変。だが、今日は商品が完売しているため、代わりの和菓子を用意できない。花いかだの水菓子に穴を開けることになる。
奈々が焦って尋ねると、依子は《違うのよ。実はね……》と少し言いづらそうに切り出した。
依子によると、国会議員秘書の宮内が花いかだに来ていて、奈々を呼んでほしいと言っているとのこと。依子がそれは難しいかもしれないと言ったそうだが、宮内が引き下がらないらしい。