クールな御曹司の甘すぎる独占愛

◇◇◇

奈々が店のドアに鍵をかけたときだった。バッグの中でスマホが着信を知らせて音を立てる。取り出して見てみれば、花いかだの依子からの電話だった。


「はい、春川です」
《奈々さん、こんばんは。もうお店は終わったかしら?》
「今ちょうど帰ろうかと」


そう答えながら、奈々は鍵をバッグへしまう。


《今からうちに来られない?》


それは唐突なお願いだった。


「なにかうちの商品に不手際でもあったのでしょうか?」


そうだとしたら大変。だが、今日は商品が完売しているため、代わりの和菓子を用意できない。花いかだの水菓子に穴を開けることになる。

奈々が焦って尋ねると、依子は《違うのよ。実はね……》と少し言いづらそうに切り出した。

依子によると、国会議員秘書の宮内が花いかだに来ていて、奈々を呼んでほしいと言っているとのこと。依子がそれは難しいかもしれないと言ったそうだが、宮内が引き下がらないらしい。

< 207 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop