クールな御曹司の甘すぎる独占愛

晶の腕の力が強まる。
その言葉もまた、奈々には信じがたい。なにも返せず、ただ晶の腕の中で口をパクパクと動かすばかり。


「長い間ひとりにして悪かった。これからはずっとそばにいるよ」
「……本当ですか?」
「本当だよ、奈々」


耳もとで晶が優しく囁く。


「東京支社に戻ることになったんだ。この先はずっとこっち」
「ずっと?」


彼の胸の中で顔を上げると、晶は「そう、ずっとね」と奈々の額に唇を押し当てた。

これからは晶と離れる必要はない。不意に訪れた幸せが、奈々の胸の奥を震わせる。


「もしかして宮内さんと明美ちゃんって」
「ふたりは共犯者」


どこか満足そうに晶が笑う。奈々にサプライズをしかけようと、晶は事前にふたりに協力を要請していたとのこと。宮内は毎日顔を合わせないからともかく、明美がよく奈々に黙っていられたものだと感心する。

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