クールな御曹司の甘すぎる独占愛
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花いかだのオーベルジュ。その宿泊予約をとったのは、晶の帰国が本決まりになってすぐだった。奈々には内緒に。そう依子や宮内たちにお願いし、晶はその日を静かに待ちわびた。
その部屋は、店内同様に白い壁が明るい印象を作り、スイートらしく洗練された調度品が並んでいる。ファブリックは海辺を意識してか、ブルー系統でコーディネートされていた。
「晶さんが、まさかここの予約をとっていたなんて」
「奈々の希望はすべて叶えるっていったよね?」
奈々はさっきから部屋を見て回っては「素敵!」と声をあげている。晶はそんな彼女をしばらく優しく見守っていたが、そろそろ我慢の限界に達しようとしていた。
――早く奈々に触れたい。
そばを通りがかった奈々の手をとり、腰を強く引き寄せる。
「奈々、部屋はあとでゆっくり見ればいいから」
「晶さん?」
戸惑いに揺れる奈々の瞳は、晶に熱く見つめられ、すぐにその意図に気づく。そっと瞼を閉じた奈々に軽く唇を重ね合わせてから、晶がいったん離す。