クールな御曹司の甘すぎる独占愛

利便性の高い大手町にある外資系のホテルエステラは、日本人はもちろん多くの外国人が訪れる。解放感のある高い天井、落ち着いた色調のモダンインテリアは高級感に溢れ、都会に浮かぶ天空リゾートさながら。

光風堂はその一階の一角に小さな店を構えている。ホテルの中庭が見える大きな窓からは柔らかな日差しが差し込み、白を基調とした洗練されたインテリアをより上質なものに映す。

高い天井から吊り下げられた照明は、オレンジ色のやわらかな光を発しており、とても癒される空間だ。

店の入口付近にはレジカウンターと二メートル弱のショーケース。そこには繊細な色合いの和菓子が並ぶ。
カフェスペースには二人掛け用のテーブルが八席。テーブルを移動してつなげ、四人掛けにもできる仕様だ。こぢんまりとした店だが、大きな窓から美しく手入れの行き届いた中庭が見渡せるため、閉塞感はない。

オープン時間の午前十一時まであと少し。奈々が腕時計で時間を確かめたそのとき。


「奈々さん、そこの照明が切れているんです」


そう声をかけてきたのは、サービススタッフの平井明美(ひらい あけみ)だった。彼女は、半年前に光風堂の一員になったばかり。


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