透明な檻の魚たち
「馬鹿……」
読み終えた私の目から、滴がぽたりと落ちて、一条くんの名前を滲ませた。
つまらない意地を張って、自分の気持ちを見ないようにしていた。私は、たぶん初めて話したときからずっと、一条くんのことが好きだったのに。
春休みになったら、手紙を書こう。大学生になるまでの最後の時間を少しだけ、私にちょうだいって。あなたとちゃんと会って、話がしたい。
今までの話も、これからの話も。
だって私たちはどこにでも行ける。透明な檻はとっくに、あなたの手で壊されていたってことは、きっとあなたも知らない事実。
私は立ち上がり、図書室を開ける準備をする。
第二ボタンをお守り代わりに胸ポケットに入れて、図書室のプレートを「開館」に直す。
はじまりはすべて図書室だった。この、海に沈んだような静かで優しい空間で、息をひそめて手に取られるのをじっと待つ物語たち。
意思を持った文字は文章となり、こころを持った文章は物語になる。
今日もこの図書室では、たくさんの美しい魚たちが、本の珊瑚礁の間をぬって悠々と泳いでいる。
読み終えた私の目から、滴がぽたりと落ちて、一条くんの名前を滲ませた。
つまらない意地を張って、自分の気持ちを見ないようにしていた。私は、たぶん初めて話したときからずっと、一条くんのことが好きだったのに。
春休みになったら、手紙を書こう。大学生になるまでの最後の時間を少しだけ、私にちょうだいって。あなたとちゃんと会って、話がしたい。
今までの話も、これからの話も。
だって私たちはどこにでも行ける。透明な檻はとっくに、あなたの手で壊されていたってことは、きっとあなたも知らない事実。
私は立ち上がり、図書室を開ける準備をする。
第二ボタンをお守り代わりに胸ポケットに入れて、図書室のプレートを「開館」に直す。
はじまりはすべて図書室だった。この、海に沈んだような静かで優しい空間で、息をひそめて手に取られるのをじっと待つ物語たち。
意思を持った文字は文章となり、こころを持った文章は物語になる。
今日もこの図書室では、たくさんの美しい魚たちが、本の珊瑚礁の間をぬって悠々と泳いでいる。


