虫も殺さないような総長に溺愛されています
瞬間移動が出来るのか!?と思ったほどに、気がついた時には目の前にその姿があり、次の瞬間には蛇の締め付けの如く抱きしめられていた。
「僕花ちゃん大好きっ。ますますもっと大好きっ。僕のこんな格好にも引かないし、」
「俺とイチカの関係にも引かねえしな。なんかいっつもニコニコ反応いいし」
「いや、服装も恋愛も個人の自由で楽しくて幸せならそれに越した事ないじゃない。2人の仲良しみてるとほっこりするよ、私」
「花ちゃ〜んっ」
「あはは、イチカ君痛い痛い、」
「それにしても、何でそんな総長云々な話が………って、あっ!」
「……なるほどな」
えっ、えっ?
何がなるほど!?
突然何かを理解した様な反応を見せて私からするりと離れたイチカ君が、私とタロ君を交互に見るなりぴょんと飛びのく。
それと同時に屋上の鉄柵に寄りかかっていたカナイ君も身を起こし、私から離れたイチカ君と並ぶと、
「「邪魔して悪いな(ね)」」
「へっ?」
邪魔?邪魔って何が??
そんな私の困惑などお構いなし、2人と言えばさらりとその身を退散させ後ろの扉の向こうにと消えてしまった。
ああ、私の眼福時間が…。
なんて、2人が消えた扉を名残惜しく見つめていたけれど、不意に指先に絡んできた熱には意識を引き戻されて。
振り返れば何か言いたげに遠慮がちに微笑むタロ君の姿に心臓を撃ち抜かれた。