虫も殺さないような総長に溺愛されています




それでも、そうなることが分かっていたよう。

タロ君…。

その瞬間を待ちかまえたように入り口前で静かに立っているタロ君の姿があって、そんな彼に自棄くそになった男が刃物を前に突っ込んでいくものだからさすがに焦った。

「退けぇ!!!」

「っ…タロく」

本当に直前まで、まったく避ける気配もなくただ立ち尽くしている様に見えた彼には血の気が引いた。

思わず口元に両手が動いて、悲鳴さえ上げてしまいそうであったのに。

「っ……おおお!」

口から零れたのはどこまでも感極まった身震いの声だったよ。

だって、今どうなった?どうやった?

タロ君が動きを見せたのは本当に必要最低限な物だったと思う。

今にも切っ先が掠めんばかりの距離になってやっとその手を動かして、相手の手首にスルリとその手が絡んだかと思えば流麗な所作でナイフを持った手を払い退けたのだ。

それと同時に左拳で相手の腹部に一発。

そりゃあ悲鳴じゃなく感嘆。拍手さえもしてしまうってものでしょ。

「相も変わらず……どこまでも卑怯で愚かしいクズだな。クズは屑箱にちゃんと捨てたつもりだったんだけど……、いっそ焼却してあげようか?」

おおお…。

今度のこれはどっちかと言えば畏怖の方ね。


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