虫も殺さないような総長に溺愛されています
その顔は柔らかな笑顔であると言うのに、目元だけはどこまでも狂気的に鋭く地面に這いつくばっている姿を見下ろして。
焼却しようか?なんて、相手の顔面近くに持っていた花火を突きつけ片手にチャッカマンを持ちだすのだから私だってドン引きだ。
「あ、あのぉ、タロく~ん、もういいんじゃないかなぁ?」
その人完全に戦意喪失して花火にビビってるし。
向こうは向こうでイチカ君とカナイ君が片付けちゃってるしさ。
これ以上やる必要はないと思うんだよね。
「花さん、」
恐る恐る待ったをかければ、こちらに視線を動かしたタロ君から狂気が消えて、手を伸ばして来てくれた時には完全にいつものタロ君だと思った。
ああ、いつもは不器用なのに。
いとも簡単に、私の腕を拘束していたロープをほどくとすぐに柔らかくも頑丈にタロ君の腕に抱きしめられた。
「…ごめんね花さん」
「ん?むしろ私が攫われちゃってごめんだよ」
「花さんは何にも悪くないよ。恐かったよね、ゴメン」
どこか悲痛さも感じる表情と懺悔の抱擁には、私の方が慰める様にタロ君の背中を撫でてしまう。