国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「あ、マリーア」

「おかえりなさませ、ミリアン様」

セルゲイの手前、マリーアは幾分かしこまる。

部屋の前でマリーアは夕食の準備をしているところだった。窓の外を見ると、すでに日も暮れていて、書庫に行ってからずいぶん時間が経っていたのだと知れる。

「お兄様、これから巡回ですか?」

「マリーア、城内ではその呼び方はやめろと言ってあるはずだ」

「はい。セルゲイ様……申し訳ございません」

血のつながりはないが本当の兄として慕っているマリーアの気持ちを拒絶するようにセルゲイが彼女を窘めると、マリーアは笑顔を消して俯く。城内では彼らなりに決まりごとがあるようだ。マリーアが頭を垂れるのを背にセルゲイが去ると、彼女はバツが悪そうに明るく苦笑いをした。

「まったく、頭の固いお兄様で困るわ」

部屋に入り、そう言いながらテーブルの上に夕食を広げていく。

身体の芯から温まりそうなトマトスープに、チキンのグリル、そして新鮮そうなサラダが盛られる。
< 134 / 295 >

この作品をシェア

pagetop