国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「ミリアン、肉団子あがったよ。ぼさっとしてないで早く持っていきな」

「はい! 今すぐ行きます!」

ミリアンの働くピレネ食堂は今日も相変わらず盛況だった。旅の疲れを癒そうと大きな荷物を床に置いて食事をしている人、若いカップルに子連れの母親など客の顔ぶれは様々だ。注文を取り、伝票を厨房に持っていく、出来上がった料理をテーブルに運ぶ。時間があったら肌を刺すような冷たい水で何十枚とある皿を洗い、息つく間もない。しかも今夜はいつも以上に客の入りがよく忙しさで目が回るようだ。

給金は日払いで、ようやく仕事が終わると小太り気味の店主がにこにこ顔でミリアンの元へやってきた。

「お疲れ様。今夜は格段に忙しかっただろう。なんでも近くでご貴族様のパーティがあったらしい。その客が流れてきたんだろうな。はい。これ、給金だよ」

「ありがとうございます。わ、なんだか今日はいつもより多い気が……」

布の小袋に入った硬貨の重さがいつもと違う。ミリアンは手のひらに載った袋の重さを確かめるように、なんども小さく上げ下げした。
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