国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
もう一度同じ質問を投げかけたところで男がミリアンに向き直り、そのフードから少し顔を上げた瞬間、ミリアンの全身が凍りついた。
(まさか……まさか、あの時の、フードの……人影?)
その覗いた漆黒の瞳がミリアンを鋭く捉える。すると、あの夜に起きた惨事の光景が、勢いよく目の前に広がった。
――お母さんを助けて! あそこで倒れているの! きっと怪我をして――ッ
――ミリアン、お母さんは、もう……
あの時、母の背中には短剣が突き刺さっていた。フードをかぶった漆黒の瞳の影に殺されたのだとずっとそう思い続けて、もし、再び自分の目の前にその影が現れたら、必ず仇を取ると決めていた。そして今、数年のときを超えてその母の仇が目の前に現れたのだ。
(許せない……絶対に!)
太刀打ちできるかどうかもわからないのに、怯むまもなく身体中の血液が一気に沸騰するような感覚を覚えた。母が殺された時、ミリアンは何もできずにただクローゼットの中で震えて災厄が過ぎるのを、膝を抱えて待つことしかできなかった。そんな非力だった自分に怒りがふつふつと沸き起こり、ミリアンは握り締めた短剣の柄を引き抜く、そして瞠目する男めがけて勢いよく振り下ろした。
(まさか……まさか、あの時の、フードの……人影?)
その覗いた漆黒の瞳がミリアンを鋭く捉える。すると、あの夜に起きた惨事の光景が、勢いよく目の前に広がった。
――お母さんを助けて! あそこで倒れているの! きっと怪我をして――ッ
――ミリアン、お母さんは、もう……
あの時、母の背中には短剣が突き刺さっていた。フードをかぶった漆黒の瞳の影に殺されたのだとずっとそう思い続けて、もし、再び自分の目の前にその影が現れたら、必ず仇を取ると決めていた。そして今、数年のときを超えてその母の仇が目の前に現れたのだ。
(許せない……絶対に!)
太刀打ちできるかどうかもわからないのに、怯むまもなく身体中の血液が一気に沸騰するような感覚を覚えた。母が殺された時、ミリアンは何もできずにただクローゼットの中で震えて災厄が過ぎるのを、膝を抱えて待つことしかできなかった。そんな非力だった自分に怒りがふつふつと沸き起こり、ミリアンは握り締めた短剣の柄を引き抜く、そして瞠目する男めがけて勢いよく振り下ろした。