国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「あぁ。ミリアン……会いたかった」

ジェイスがぎゅっとミリアンの身体を包みこんできつく抱きしめる。思わぬ彼の行動と伝わるぬくもりに、まるで恋人たちが交わす抱擁のように思えてミリアンは戸惑いを覚えた。レイのぬくもりが染み込んだこの身体が、まるで拒否しているようにも思えた。

「ジェイス、私は大丈夫だから」

気恥ずかしくなってそっと身を離すとミリアンは息をついた。

「教会の子どもたちは? ロパ様は? みんな元気にしているのかしら? それに私、せっかく雇ってもらっていたピレネ食堂にもなにも言わずに――」

矢継ぎ早に今まで気になってどうしようもなかったことをジェイスにぶつけると、ジェイスはそんなに焦らないで、と小さく笑った。が、その笑顔には少し陰りが混じっていた。

「ピレネ食堂のことはわからない。給仕なんて入れ代わり立ち代わりが激しいだろう? 気にすることないよ、それに教会の子どもたちは元気だ……と思う」

その歯切れの悪い口調に違和感を覚える。ジェイスはミリアンから視線を外し、少し言いにくそうに口を開いた。
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