国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
(そんなに嬉しかったのかしら……)

――えぇ、私でよければ喜んでお供いたします。

ミリアンがそういうと、レイは安堵したような表情で目を柔和に細めて笑った。あの時の笑みがミリアンの脳裏に焼き付いて離れない。

その心臓に剣を突き立て、母の仇を必ず討つ。

内心では穏やかでないことを考えているのに、そんなことも知らずに彼は笑っていた。

「痛っ……」

ミリアンは不意に襲ってきた頭痛に顔をしかめた。

ジェイスに会った夜から数回あることだったが、心にほんの少しでも迷いのようなものが生まれると、急に原因不明の頭痛に見舞われ、そしてレイのことが無性に憎くてたまらなくなってしまうのだった。

(私、どうかしてる……? ううん、そんなことない。大丈夫よ)

ミリアンは部屋でひとり静かに煌めく短剣をじっと見つめながら、柄を握る手に力をこめた。
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