国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「……そうです。あの水差しの中に入っていた水にはジェイスからもらった毒が入っていました。これも、すべて……母の仇を取るため」

「そうか」

すると、レイはそれを聞いて怒りを覚えるでもなくただ切なげに、そして悲しげにミリアンを見つめた。

(どうして、どうしてそんな顔するの?)

胸が痛い。心が痛い。母の仇である彼が憎くて仕方ないはずなのに、それでいて愛おしい気持ちが蘇る。こんなにも胸が押しつぶされそうで切ない気持ちは初めてだった。

今度こそ、国王陛下に対する謀反で死罪を免れないことをした。怒り狂って剣を向けられてもおかしくはない。そう思っていたのに、レイはまるで信じていた者に裏切られたような悲痛に満ちた顔をしている。

「ミリアン……」

肩にレイの手が載せられる気配がしてミリアンは身をかわす。
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