国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
誰かにぶつかったのではないかと思うくらい、冷たく湿気を含んだ風の塊が吹き付け、咄嗟に顔を背ける。ミリアンの髪飾りが吹っ飛び、金の髪がほつれてなびく。瞬時に閉じた瞳をゆっくり開けると、そこは小さくもないが広くもない塔のバルコニーだった。
「ど、どうして……?」
「ガンタール城はこのあたりの地形に合わせて建設された城なんだ。景色が一見地上に見えても、実際は二階や三階だったりする。くそ、惑わされたな」
チッとレイが忌々しそうに舌打ちをする。
どうにか追っ手を撒いたようで、ジェイスたちの気配が消えた。
ここは日中であれば絶景なのだろうが、今はそんな悠長な余裕はない。腰の高さくらいまでしかない塀に身を乗り出すと、荒れ狂う波が白泡を押し寄せては引き、勢いよく岩にぶつかって砕け散っているのが見えた。こみ上げる恐怖にミリアンがゴクリと喉を鳴らす。
「先ほどジェイスが言っていたことは本当か?」
ふいに背後からレイにそう尋ねられて、ミリアンは観念したように目を閉じた。時折吹き付ける強い風に漆黒の髪が乱され、表情が見え隠れしていたが、眼光だけは隠しようがなく、鋭く光っている。
(私は計画に失敗した。そして企てを知られてしまった……)
ここでレイに殺されるかもしれない。という恐怖を振り切ってミリアンはレイに向き直った。
「ど、どうして……?」
「ガンタール城はこのあたりの地形に合わせて建設された城なんだ。景色が一見地上に見えても、実際は二階や三階だったりする。くそ、惑わされたな」
チッとレイが忌々しそうに舌打ちをする。
どうにか追っ手を撒いたようで、ジェイスたちの気配が消えた。
ここは日中であれば絶景なのだろうが、今はそんな悠長な余裕はない。腰の高さくらいまでしかない塀に身を乗り出すと、荒れ狂う波が白泡を押し寄せては引き、勢いよく岩にぶつかって砕け散っているのが見えた。こみ上げる恐怖にミリアンがゴクリと喉を鳴らす。
「先ほどジェイスが言っていたことは本当か?」
ふいに背後からレイにそう尋ねられて、ミリアンは観念したように目を閉じた。時折吹き付ける強い風に漆黒の髪が乱され、表情が見え隠れしていたが、眼光だけは隠しようがなく、鋭く光っている。
(私は計画に失敗した。そして企てを知られてしまった……)
ここでレイに殺されるかもしれない。という恐怖を振り切ってミリアンはレイに向き直った。