国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「まったく、お前の部下は血の気が多いな」

「ああ、すまないね。僕は何も指示してないんだけど、手柄に目がくらんでこいつが勝手にやったことだ」

余計なことを、とジェイスは地面に打ち付けた頭を押さえて転がっている兵士の脇腹を蹴り上げた。兵士はまだ若く、短く呻いて身を丸く縮こませた。

「見たかミリアン、これがあの男の本性だ」

レイに言われて初めて見るジェイスの乱暴さに、ミリアンは目を見張る。

いつも笑顔で優しく語りかけてくれたジェイスだったが、今、その仮面が剥がれ落ち醜悪な表情をまとって現れた。

「はぁ、面倒くさいな。さっさと片付けろ。彼女は傷つけるなよ」

ジェイスの合図と同時に兵士たちが剣を振りかざして押し迫ってきた。危機迫る状況に、ミリアンの体勢が崩れるのも構わずにレイが力強く引き寄せ、背後に庇う。兵士たちの白目は血走り、大陸一の王の首を取る手柄のため興奮が高まっているのが感じられた。

「はぁぁ!!」
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