国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「えー! もっと聴かせて欲しいー! ミリアンお願い」

「だーめ、これでおしまいねって約束したでしょう?」

歌い終わったミリアンは、もっともっととせがむ子ども達をなだめ、自分たちの部屋へ行くように促した。名残惜しむように渋々子供たちは立ち上がり、それぞれ教会へと戻っていく。そんな姿を眺めながら、ひとりになるとミリアンはふと昨夜の出来事を思い出した。

フードから覗いたあの瞳。その素顔があらわになった時、ミリアンは息もできなかった。何を言うでもなくじっと見つめられ、男の残像が鮮明に浮かぶ。ついカッとなって剣を振るってしまった。身を守るために持っている短剣だったが、先に攻撃を仕掛けたのはミリアンだった。冷静になると、安易に人を傷つけようとした自分の行動をいまになって後悔していた。

(あの人は……本当に母の仇だったの? 他人の空似だったんじゃ……だとしたら私、とんでもないことをしてしまった)

そんなことを鬱々と考えていると。
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