国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
(今夜も冷えるわね、子どもたちはちゃんと寝たかしら?)

時刻は二十二時。

日中は太陽の恩恵を受け、温かく朗らかな陽気だったが、日が沈むと身を切るような寒さが訪れる。空気が澄んで満天の星が広がり、夜空を横切るようにうっすらと天の川が光の帯を伸ばしていた。

小さな子どもたちを早々に寝かしつけ、年長の子どもには勉強を教え、ようやく自分の務めを終えると、ミリアンは教会の戸締りをした。ロパ牧師は高齢のため就寝が早い。今夜は休みをもらって、久々にゆっくり自分の時間を過ごそうと思っていた夜だった。

(今、なにか聞こえた気が……)

戸締りをした玄関ドアの向こうから微かに馬のいななきが聞こえた。気のせいかと思い、その場を離れようとしたが数頭のひづめの音がこちらへ近づいてくる気配がした。

(こんな時間に誰かしら?)
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