国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
時刻はすでに二十二時を回っていて、礼拝に来るにしては遅すぎる。ロパ牧師に会いに来る大抵の人は、ロパ牧師が二十一時には就寝してしまうことは知っているはずだ。では一体誰が……?

ミリアンは不審に思い、そっとドアに手をかけたその時。

「きゃ!」

すると、いきなりドアがガバリと無理やり大きく開かれて、ミリアンはその勢いで前に身体を持って行かれそうになった。

「夜分に申し訳ない。ミリアン・エマ・フィデールという娘はここにいるか?」

目の前に、三人の兵士を従えて一際立派に武装した騎士が立っている。鼻と顎に短い髭を生やして、深緑色のマントで身体を覆っていた。つなぎ目の割れ目から剣の柄が見えて、ミリアンは民間人ではないことを察した。

「ミリアン・エマ・フィデールは私のことですが、なにか?」

すると、目の前の男はミリアンをじっと凝視すると懐からなにか書類のようなものを取り出した。そして両手でピッと広げて張ると、滑舌よくそれを読み上げた。

「ミリアン・エマ・フィデール。公務執行妨害、及び国王陛下に対する反逆の疑いで連行する!」

(……え?)

そもそも、この集団は一体誰なのか?公務執行妨害?国王陛下に対する反逆とは?

ミリアンは状況が把握できずに呆然と石のように固まった。
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