国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
「あなたは、誰?」

闇に包まれた影は声からして男であることはわかったが、どんな容姿でどんな格好をしているのかまでは見えなかった。しかし、不思議と恐怖や不安を感じない。それはその影から殺気を感じなかったからだ。

ミリアンが声を掛けようと口を開きかけた時、その影がまるで煙のようにゆらりと動いて暗闇へと消えていなくなってしまった。

遠目だったが、なぜか不思議な雰囲気が感じられた。ミリアンは再び先程まで自分が座っていた場所へ戻ると腰を下ろした。

(な、なんだったの……?)

あまりの疲弊に幻惑でも見たのではないだろうか。しかし、確かに聞こえた声は幻でもない確かに人だったとミリアンは頭を振った――。
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