国王陛下はウブな新妻を甘やかしたい
内心そう悪態づいて、ミリアンはひとり部屋の中へ恐る恐る入っていった。

その部屋はミリアンに与えられた部屋と広さはさほど変わりなく、驚くほど狭くも広くもなかった。入ってすぐ右手には煉瓦作りの暖炉がパチパチと音を立てて薪を燃やしていて、心なしか空気が温かくて心地よい。厚みのある落ち着いた深緑の絨毯が敷かれ、中央には高価な艶のあるテーブルと椅子、そして奥に三人くらいは余裕で寝そべられそうな大きなベッドが置かれていた。

左にはミリアンの部屋にあるものよりも二倍は大きい本棚が並び、中には文字の意味すらわからない難読な題名の本もある。これを全部読んでいるとしたら、レイはかなり博学な人物であるとうかがい知れる。

「いつまでも突っ立ってないで、こっちへ来い」

窓の外を眺めていたレイが腕を組んでミリアンに視線を移す。部屋の灯りはテーブルに置かれたランプひとつ。オレンジがかった柔らかな灯りがレイを照らすと、その端正な顔立ちがはっきりと浮かんだ。
昨日のようなかっちりとした軍服姿ではなく、今は白いシャツにズボンにブーツといった至って軽装をしている。

「レイ様、お呼びでしょうか?」

ミリアンはレイと距離を保ちつつ部屋の中央まで歩み進む。どうしても彼の前では変に緊張してしまう。乱れる心臓の音を聞かれてしまうのではないかと高鳴る胸をそっと抑えた。
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