極上恋夜~この社長、独占欲高めにつき~
もしここで、「キスして」とか「抱いて」とか、女らしいことのひとつも言えたなら、彼は私のことを女性として見てくれるようになるのだろうか。

仕事で接点のなくなったこの先もずっと、女性としてそばにいさせてくれる……?

シラフの彼に告白したら99パーセント振られるだろうけれど、今の酔っぱらった彼ならば、失恋確率も70パーセントくらいに下がっているんじゃないだろうか。

「……五年分の責任……取ってください……」

掠れた声を絞り出して、私は思い切り彼のネクタイを引っ張った。

「咲……島……!?」

自分の唇のところまで彼のそれを持っていこうとしたのだけれど、わずかに抵抗されて、すんでのところでとまってしまう。

唇の距離は、あと五センチ。

――不意打ちでキス作戦、失敗だ。

急に自分の行動が恥ずかしくなってきて、彼に顔も向けられなくなってしまった。

私のバカ。なんてことしてるんだろう。

ネクタイから手を離し、彼に背を向けて小さく丸くなった。
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