はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
私にバナナ牛乳を出し、男にコーヒーを出すと、マスターは口を開いた。



「ってか、お前がツレと店に来るなんて初めてじゃねーか?」



「コイツには借りがあるのと、昔のオレと同じ眼してたから…。」



「放って置けなくなった?」



「そんなトコ、逃げ場要るんじゃないかって思ったし。」



そんな簡単に、言い当てないでよね…。



「だからって、教師志望してる奴が学校サボらせるのはどうかと思うぜ。」



「はぁっ!?アンタみたいな軽薄そうな男が、教師になれるわけないじゃん!」



マスターの言葉にちょっとびっくりした私は、つい言ってしまった。



「昼にのこのこと学校に来て、速攻出てったサボリ女は黙れ。」



「忌引で休みなんだから、サボリじゃないし!!」



私はバナナ牛乳を一気に飲み干して、なおも言葉を続けた。



「何で大学落ちたくらいで、自殺なんかするのよ!

私はお兄ちゃんの代わりに、あんな腐った家の跡なんか継ぎたく無いし、あんな奴と結婚なんかする気も無いわよ!

先生だって…、酷いよ。

あれだけ可愛がってくれてたのに、手のひら返したような態度取って…。」



ずっとガマンしてたけど、しまいには泣き出していた。



泣くだけ泣いたら、少しは落ち着いた…のかもしれない。



「ウチのお嬢様も、いずれはアンタみたいに婿養子取って、次の跡取りを産ませられるのかな…。」



そんな、男の呟きが聞こえた。



その言葉を聞いて、自分にはまだ切り札があることを思い出した。



「私、帰る。」



「何だ?いきなり…。」



男はそう言いながらも、カウンターに置いた車のキーを手にした。



「またいつでも、羽を休めにおいで。」



マスターの言葉に頷くと、私は外に出た。









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