はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
隣で身震いのジェスチャーする蒼を、横目で見た。



「そんなに怖い?」



「僕の中では、坂下先生と喬木さんは甲乙つけ難い…。」



それを聞いた喬木さんは、ミラー越しに笑みを浮かべていた。



坂下も喬木さんも穏やかそうで、むしろ蒼の方がコワイ。



「桐生、見た目に騙されるなよ。」



そんな話をしてるうちに、家に着いた。



「あ、裏門に停めてもらっても良いですか?

制服着てるときは、恥ずかしいから裏から入れって言われてるんで…。」



蒼は一瞬だけ目を丸くすると、私の髪をくしゃっと撫でた。



喬木さんは無表情のまま、指示通りに裏門へ車を着ける。



だけど、ドアを開けてくれた時にこう言ったんだ。



「差し出がましいようですが、何かのお役に立てれば…。」



そう言って、一流企業の取締役の肩書きがついた名刺を私にくれた。



こんなものが、役に立つのかな?








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