はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
「桐生、痛かっただろ?

あの野郎、ホント酷いことするよな…。」



蒼が出て行ってしばらく経ち、入ってきた野田先輩が、私の顔を見るなり言った。



野田先輩は、知ってるんだろうか?



どこまで広まっているか分からないけど、坂下を処分せざるを得なくなるような…下手なことは言わない方が良い。



「ひ…酷いことって?」



「隠さなくて良い、坂下ら呼んだの俺だし。

学校側は今回のこと、握り潰しにかかってるぞ。

新聞部に、タレ込むか?」



「止めて!

私が、鬼マサに頼んだの。」



「そっか…、なら良いんだ。

怪我の具合、どうだ?」



「手首、痛めたみたいで…。」



私はそう言いながら、右手を見せる。



「マジかよ…。

利き手怪我して、明日のステージパフォーマンス大丈夫なのか?」



んー、どうだろ?



「それと、悪いニュースが1つ。

桐生の展示作品、またやられた。」



またか…、そう思った。



人の作品を破いたり汚したりして、楽しいか?



そうなると思っていたから、今日は朝早くに来たんだ。



それも、無駄だったけど…。



「もう文化祭始まるし、今からじゃ書き直すの無理だね。」



その言葉を聞いた野田先輩は、ため息をついた。



「なんか、ヤなことばかり続くな…。」



「そうでもないよ、翠子さんのロザリオ傷つかなかったし。」



それに、坂下が助けに来てくれたし…。



私は、左手首のロザリオを掲げた。



「お前、ロザリオ庇って右手怪我したんじゃないだろうな?」



その通りだったので、何も言えなかった。



野田先輩が、一段と大きなため息をついた。









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