はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
こんなとこでサボってるし、首根っこ掴まれてすぐに連れて行かれるかと思ってた。



だけど坂下は、私の隣に座ると



「コーヒーをいただけますか?」



そう言いながら、カウンターの隅に追いやられていた灰皿をそばに引き寄せた。



マスターがコーヒーを淹れてる間、坂下は黙ったままタバコを1本吸う。



私に言うこと、あるんじゃないの?



ほんの数分なのに、その沈黙がすごく長く感じた。



坂下は、出されたコーヒーに口をつけると



「桐生さん、明日は部長会議です。

今日中に部長を決めますので、放課後になったら部室に来てください。」



と、言った。



3年が部活を引退したため、顧問の立場ならそう言うのも分かるけど…。



「授業サボってること、咎めるのが先じゃないの?」



「担任と顔を合わせたくないなら、それでも結構です。

ですが…次からは、せめて校内にいてください。」



坂下は、再びカップを手にした。



コーヒーを飲み終えると、坂下は新たにタバコを取り出して吸い始める。



さっき、吸ったばかりなのに…。



「そろそろ、修学旅行の話が出ているでしょう?

京都には縁結びだけでなく、縁切りの神社もあります。」



何で、突然そんな話を?



「神頼みで解消されるとは思いませんが、行ってみてはいかがですか?」



ジイサンが決めた婚約のことも、未だにセーリのことを隠し続けてるのも…。



坂下は、覚えててくれたんだ。



「ありがとう、そうしてみる。」



私の言葉に、坂下が微笑んだ…かと思いきや、表情を一変させた。



坂下が、激しく咳き込んだ。



かなり、長い時間…。



最近、こういうの多い…よね?








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