はつ恋【教師←生徒の恋バナ】

・若菜サイド

病院の前で深夏と別れ、私は1人でトボトボ歩いて家に向かう。



「明日の放課後、現像するから付き合ってよ。」



深夏がそう言ったってことは、明日早々には記事にしないということなのだろうか。



こんなスクープだし、すぐに飛びつくと思ったんだけどな…。



ぼーっと歩いていると、すぐそばに黒塗りの高級車が1台停まった。



ウチのジイサンも運転手付きでそれなりの車に乗ってはいるけど、この高級車には敵わない。



すっと窓が開けられ、顔を出したのは…。



「ごきげんよう、若菜さん。」



翠子だった。



彼女の顔を見た途端、なぜだか分かんないけど涙が溢れてきた。



こんな道端でいきなり泣かれても困るはずなのに、翠子は嫌な顔ひとつせず



「若菜さんと一緒に、お茶をしたいと思っていましたの。

今から、いらしてくださる?」



なんて、優しく声をかけてくれた。



「しかし、翠子様…。」



翠子付きの使用人が、口を開きかけた時…。



「若菜さんは、私のローザリーです。

私の交友関係に、口出しなさらないで。」



ピシャリと言い放った。



まぁ、翠子ん家くらいの格式があれば、付き合う人間を人柄よりも家柄で選びたいところなのだろう。



翠子の行動にも口出そうとするくらいだから、教育係も任されているかもしれない。



翠子の屋敷に到着した際、ニコリともしない使用人に呼び止められた。



「帰りはご自宅まで送らせていただきますので、場所を教えていただけますか?」



既に帰りの話が出るのだから、ホントに歓迎されてないな…。








< 246 / 286 >

この作品をシェア

pagetop