はつ恋【教師←生徒の恋バナ】
深夏は、ため息をつくと



「そう言うと…思った。」



呟くように言った。



私が、そう言うと…思った?



深夏の言葉に、疑問を感じた。



だけど、深夏は私の疑問に構うことなく、言葉を続ける。



「で、何でワカは今更ヤメようなんて言い出したの?」



何でって…。



「生徒に手出すなんて、最低じゃん。

ワカだって、坂下先生をクビにしてやろうと思ったんじゃないの?」



「でも、もうすぐ死んじゃうし…。」



「それだけ?」



それだけ…じゃ、ないけど…。



「ホントにそれだけだったら、私は記事にする。」



「止めてっ!!

ミカお願い、坂下を困らせたくないの!」



私は、深夏に縋りつく。



「私…、私っ…。

坂下のこと…。」



私の目から、涙が零れた。



「先生が、好きなの。」



自分の口から言葉にしたのは、初めて。



だから、深夏がどんな反応を示すのか気になった。



縋りつく私を振り解くことなく、深夏は口を開く。



「うん、知ってる。」



知ってるって…。



呆然とする私に深夏は、なおも話しかける。



「ワカの望み通り、記事にしないで黙っていてあげる。

その代わり…、ご褒美ちょうだい。」



返事をする間もなく、深夏は…。



最初、何が起こったのか分かんなかった。



気がついた時には、“ソレ”は既に終わってた。



まさか、深夏と…女の子とキスするなんて…。



パニくってる私は、拒絶の言葉すら出ない。



「私、ワカのこと好きだもん。

好きな子が、誰を想ってるかくらい…分かるよ。」



少しだけ落ち着きを取り戻したのか、やっとのことで私が口にした言葉は…。



「ミカ、私の…。

コレ、ファーストキスだったんだけど。」









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