だから何ですか?
そっちだって寂しかった的な事を言っていた癖によく分からねぇ。
そんな感覚で腕を組んで非難するように目を細め、相変わらず携帯を弄っている亜豆に溜め息をつけば。
「かけませんよ」
「なんでだよ」
「会えもしないのに声なんて聞いたら余計に寂しいじゃないですか」
「・・・・」
「絶対に仕事に集中出来ない。ただでさえ伊万里さんに好きだって言われて集中力欠如してたんですから」
さらりと淡々。は、もう言わずもがなだろうか?
その視線は相変わらず携帯に落とされての発言であるのに、言われている内容は表情に反してどこまでも甘い。
だけどもそのギャップが多すぎてすんなり受け入れきれずに呆けていれば、
「だから、・・・あんまり私を伊万里さんに惚れさせないでください。充分に好きで困ってます」
はっきりきっぱり、
携帯をポケットにしまいながら、彼女が特別羞恥も見せない顔でそう言いきり背を向ける。
そのまま扉の前にまで移動しドアノブを掴むとようやく振り返り、
「では後で、クリエイティブの伊万里さん」
そんな言葉とフフッと小さく笑った音を響かせ残し、最後の最後に漂った彼女の余韻は空気に触れた白い靄か。
遠ざかっていく靴音は来るときよりも早い?
惚れさせるなって・・・充分に好きって・・・。
「それは・・・こっちもだっつーの・・・」
ああ、もう、いつだってこうだ。
先に去って行く亜豆の後ろ姿にもどかしいと悶えるのは俺の方。
未だって変に高ぶった心に反して解消しようもなく自分一人がここに居て。
天然魔性女め。
そんな事を心でぼやきながら自分も扉に向かって歩き出した。