だから何ですか?
それでも今この瞬間の自分の感覚は間違いないだろう。と結論を下し、『あるだろ』と返そうとした瞬間に。
「伊万里さんは私を疑ってない」
「・・・・」
「私は伊万里さんが好き」
「・・・・」
「それ以上・・・何か必要ですか?」
純粋な子供の様な眼差しはいつだって鋭い。
迷いもなく揺るぎもないから大人の感覚である生き物程たじろいで言葉に詰まるのだ。
必要である筈なのに思わず黙ってしまったのは亜豆が指摘した事は諸々欠けすぎてはいるけれど極論として間違っていないからなのか。
でも欠如しすぎの。
それでも『必要か?』とまっすぐ切り返されてしまうと更にの追及の仕方にどう出ようかと迷ってしまう。
そんな迷いの沈黙を破ったのは『ふー』っとワザと音を響かせるように煙を噴いた亜豆。
そうして、
「分かってます。必要ですよね。・・・一応社会人だし無神経ではないので人として説明すべき場面だとは分かってますよ」
言いながらラックに手を伸ばし華奢な手に捕まったのはシンプルなスクエアの陶器の灰皿。
トントンと自分の灰を落とすとこちらに灰皿を伸ばして俺にもそれを促して、それに従いトンッと灰を落としたと同時。
「『おにいちゃん』なんです」
入り込んだ声音ははっきりとした響きであったのに、上手く処理できずに中途半端に耳の奥に引っかかって違和感を残している。