だから何ですか?




そう、元々こういう予定はなかった。


家にも上がらず余計な欲を煽ることもなく今日は終わる筈だったのに。


カメラを届けて帰るつもりが思わぬ海音の存在の介入。


それに余計な誤解、戸惑いや焦りで遊ばれて、嫉妬を駆り立てられた事で結果避けた筈の事態に落ち込み・・・自滅。


生殺し感半端なくいる自分に愉快だと声を立てて笑う姿に苛立ちを隠せるはずもなく、誰のせいだとばかりに非難を露わに反応してしまう。



「あはは、悪い」


「ふんっ・・・」


「いやぁ、なんて言うのか・・・ものの見事に俺が辿った過程だなぁって思ったらなんか愉快でね」


「・・・・・・・・・はっ?」


「ん?何?」



いやいやいや、『何?』にっこりじゃなくて。


今なんか聞き流せなかった事サラッと言わなかったか?


ようやく落ち着いたと思った矢先に新たな問題提起とばかり、取り様によってはかなり危うい言葉を発した海音は何食わぬ感じに煙草を咥えてジッポで火を着け煙を噴かし始めた。


どこまでおちょくる気だ。と、舌打ち交じりに立ち上がろうと腰を浮かせば、



「【亜豆】の事なら細部に渡ってまで知り尽くしてるんだよ」


「っ・・・・」


「好きな相手にはとことん素直で従順で・・・堪えて・・掴んで縋りよる仕草とか・・・可愛くなかった?」



それは・・・


さっき、体感済みの心底愛らしいと思った亜豆の姿だ。


紫煙漂わす男の笑みが底意地悪くて胸糞悪い。



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