だから何ですか?






この男はいつだってそうだ。


試す様に、惑わす様に、その一言一言に罠がある。


それが自分に向けられていない内は特別危険視はしていなかった。


でもこうしてその対象に自分がハマってしまえば足掻いて振り切って逃げたつもりがまだ手中で。


今だって言葉の毒を絶妙な塩梅で俺に盛って反応を伺い楽しんでいるような。


だけど、そうそう騙されて振り回されてやるもんか。と、足掻けばまわりそうな毒に敢えて触れず、性質悪く笑う男の横をすり抜けると廊下に身を出す。


『可愛くなかった?』


可愛かったさ。


自分だけのモノだと独占欲疼いたほどに。


だからこそ海音の言葉は衝撃で、一瞬にして戸惑いや疑惑、嫉妬の念が浮上したくらいだ。


それでもそれを海音に追及してしまえばあの男の目論見通りなんだろう。


そしてあいつははっきりとした答えをその口からは響かせない。


確かめるにせよ亜豆本人ときちんと向き合って、亜豆から聞くのが一番正解の行動だろう。


それに・・・、その問題も然りだがさっきのフォローもしておかないとなんかマズそうな現状だしな。


この疑惑の追及も重要ではあるけれど、まず解決すべきは前の問題だろうと戸惑いながらリビングの扉の前に立つ。

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