だから何ですか?
自分の女々しい思考に呆れつつ、目の前の存在は愛おしいとポンポンと軽く頭を撫でて数回頷く。
「分かったから。そもそもが俺が言いだした急な誘いだったわけだし。また改めてお互いに余裕のある時間に仕切り直しって事で」
「・・・・すみません」
「いや、むしろわざわざ直に言いに来てくれて嬉しいよ」
そうだ、それこそ電話でもメールでも出来た報告をわざわざ待ち伏せて言いに来てくれたんだ。
それで十分に亜豆の誠意は伝わる。
「・・・そろそろ、行きますね」
「ん、」
カタンと響く椅子の音に物悲しさを感じる。
目の前に居た筈の姿が立ち上がって、一瞬名残惜しさを見せる様に不動になるもキリを付けたようにコツンと響いたヒール音。
その瞬間に馬鹿みたいに手を伸ばしてしまったのは俺で、華奢な腕を掴んで引き寄せ亜豆の驚愕に満ちた顔に自分の顔を寄せた。
・・・・・・筈なのに。
「っ・・・・」
「・・・・・」
唇に得た感触は柔らかくも求めたものではなく。
亜豆の掌の熱を感じ、至近距離で絡んだ双眸は驚愕と焦りで揺れている。
あれ?・・・・なんで?
なんて、こちらもどう出ていい反応か戸惑いに満ちて不動になって、先に動きを見せたのは、
「・・・ひ、・・人の気配が。・・・すみません」
下手くそ。
そんな感想が真っ先に浮かぶ言い訳を言うや否や、俺の手を振りきるように身を離した亜豆が足早な靴音を響かせフロアを抜けていく。