だから何ですか?


憤り全開。


下手したら嫌いだとさえ感じながらの拒絶の言葉を吐いたつもりであったのに。


目の前の亜豆もさすがに驚愕を示したような姿であったはずなのに。


その姿に、言葉に、『あ、終わったな』と俺と亜豆の関係の切れ目を見た気がしたのに。


またもや・・・・肩透かし?


突如小さく噴き出して、それがきっかけで堪え切れないとばかりに肩を震わせ始めた亜豆が次の瞬間には屈託のない笑みで笑いだすという衝撃。


それには今までのもどかしさだとか憤りなんて一瞬で吹き飛んで、今あるのは何故か笑われたという理由の分からない羞恥心だろうか。


笑うなと言って思わず顔を掴んでしまうのに、今までの無表情が嘘のように笑い続ける姿には不覚にも『可愛い』なんて言葉もちらつくから厄介だ。



「あー・・・、もう、何をそんなに憤っているのかと思ったら。・・・私が伊万里さんの知り得る女性枠から外れている戸惑いからのそれですか」


「っ・・・違うっ、」


「違うんですか?それは残念。嬉しかったのに」


「・・・・・嬉しい?」


「嬉しいですよ。だって、それってつまりは伊万里さんの気にかかる範疇に引っかかったって事じゃないですか」


「っ・・・」


「その他大勢の女性の一人に含まれて嬉しいなんてことあるわけないでしょう?」


「それが【不快】って特別枠でもかよ」


「はい。・・・知ってます?好きも嫌いも相手を意識においているからこそ成り立つものだって」


「っ・・・」


「私は伊万里さんを【好き】だって意識して、伊万里さんは【嫌い】だと意識している。

・・・片想い同士ですね」



フフッと笑った姿は大人の色気孕む妖艶さにも見えるのに、どこかひたすらに無邪気で悪戯っ子の様な無垢さも感じられる。


こんな女・・・初めてだ。




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