だから何ですか?
てっきり、今度こそはっきりと拒絶の意志が音として響くのだと思っていた。
酷い、キスなんかしたくなかった、もう好きじゃない、とか。
好きであったけれどつきあってみたら理想と違ったとか、さすがに決別の言葉ばかりが予測にあった。
それに対して俺も感情的な罵倒ばかりが喉の奥で控えていたというのに、思いもかけない一言にみんな出番を失って戸惑い引っ込んだような。
俺が予想外の流れに不動になっている間にももどかし気に呼吸を整えながら涙目で見上げてくる亜豆は健在で、落ちていた手が震えながら俺の服を掴んできた事には再び予想外で困惑する。
「どうして・・・くれるんですか、」
「・・・・えっ?」
「も・・ほんと・・・我慢してたのに」
「・・あの・・・亜豆?」
「も・・・あの夜から本当・・・おかしくって。伊万里さんに触られたの気持ち良すぎておかしくって・・・」
「っ・・・」
「これ以上触られたら・・・・どんどん好きになる」
「あず・・」
「好きになって、好きになりすぎて・・・絶対に伊万里さんに迷惑かける!ああ、もうっ・・・・私なんかが好きになってすみませんって・・・、少し冷静にならなきゃって今までみたいな距離目指したのに我慢できなくて・・・避けようと思ったのに出来ないでチョコ置いてったり煙草くすねたり会いに行ったり・・・」
「・・・・・・・」
「なのに・・・台無し・・・。伊万里さん不足を誤魔化す様に隠れて伊万里さんの煙草吸ってたけど・・・全然補えてなかった。・・・・・・・っ・・・キス・・好き」
もうっ、ともどかし気に熱のこもった息を吐きだして、ただひたすらに驚愕でしかない俺の胸にトンと頭を預けてきた亜豆。