だから何ですか?
何の疑いもなくくるりと向きを変えた小田の隣に並んで、何買ってきたの?なんて他愛のない話を持ち掛け歩き出す。
そうして自分の席から僅か離れた頃合いに無意識にポケットに手をやった風に見せかけ『あっ』なんて声を響かせると自分の席を振り返り、
「悪い、先行って。煙草上着のポケットだ」
「ヘビースモーカーですね。肺がんになりますよ?」
「もう手遅れな程腹の中は真っ黒ですから」
「ああ、薄ら知ってました」
冗談交じり。
いつものようなやり取りをふざけて交わし、取ってくると自分だけ向きを変え彼女も言われるままに進んでいた方に足を進める。
さて、お嬢さんの心境は如何に?と意地悪くほくそ笑んで自分のブース手前まで足を進めた。
「伊万里さん、」
不意に響いた声にピタリと足を止め、予想外の呼びかけに微々たる驚愕を表情に映しながら振り返る。
呼び止めたのは俺と逆を進んでいた筈の小田で、呼び止めた癖に次の言葉を発するか迷っているような戸惑いの表情と開きかけている唇。
そんな姿にヒヤリと動揺が走るのは何故だろう?
『待った!』と、心が叫ぶも音にならぬそれに抑制力なんてある筈もなく。