だから何ですか?



そんな瞬間に途端に背後の亜豆の気配に緊張するのは昨夜の再現の様な。


なんで・・・、何でやましい事はしてないのに浮気男の心境の様な感覚に陥ってるんだ俺。


そんな俺の焦りなど伝わる筈もなく、近づいてくる小田にも悪意なんてまるでなく。



「もう、時間あればすぐに煙草ですか?」



決して本気でない非難を口にし、すぐ近くまで来ると俺の隣で煙草を吸っている亜豆に意識を走らせ愛想よく笑ってみせる。



「お疲れさまです。あ、違う、おはようございます」


「おはようございます。伊万里さんのお迎えですか?」


「はい。もう、ちょっと目を離すと煙草吸いに行ってしまってて。明日企画本番なんですからね、」


「わかってるよ。子供じゃねぇっての」



まるで先生か母親か、それでも親しいからの口調と行動で、親しさを偽る気はないけれど今この場ではやはり緊張感の方が勝ってしまう。


それでもいつもの感じに受け応え、こちらも遠慮なしに『うるせぇな』と本気でない言葉を発して切り返す。


そんな中でひたすら景色を眺め無表情で煙草を吹かす姿の恐い事。



「わかったから。コレ吸い終わったらすぐ戻るから、予定表とか確認資料まとめて出掛ける準備しといて」


「了解です。出来るサブを持って感謝してくださいね。じゃあ、亜豆さんお疲れ様です」


「お仕事頑張ってきてください」


「はいっ、」



礼儀正しく、最後まで亜豆にも気を配り挨拶を交わすと愛想のいい笑みを浮かべて背を向ける姿。



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