だから何ですか?



頬に当てていた手をスルリと滑らせそのまま抱き寄せたのは無意識で・・・必然で。


抱きしめたかったのか、その甘さに寄りかかりたかったのか。


自分の顔を亜豆の肩に埋めてくぐもった声で響かせた言葉は、



「痛かったよ。・・・・ってか、今も痛てぇ」


「・・・・お疲れ様です」



トントンと宥める様に、労わるように背中を撫でてくる手が優しい。


普通であるなら冷やかしの声が飛んでもおかしくない抱擁なのに、場所と時がそれを許してくれるらしくカップルの寄り場であるここでは引け目もなく継続出来る。



「本当に・・・お前何なの?」


「フッ・・・まだ言いますか?」


「だって・・・もう、本当・・・何言っていいか分かんねけど、なんか何だよ・・・」


「はいはい、その位私が気になって気になって恋しかったって解釈しておきますから」


「生意気な。キス下手な癖に」


「関係ありますか?」


「だいたい、何で携帯にまったく応答しないんだよ?遅ればせながらだったけどメールもしたし電話もしたぞ!?」



遅れた分際、しかもがっちり抱き締めながら何不満をほざいているのか。


そんな事を自分で自分に思うのだけども、やっぱり突っ込まずにはいられなかった応答の有無。


出ていてくれたら、せめてメールを返していてくれたらこんなもどかしい感情に満ちなかったし待ち合わせ場所を暖かい場所に変えることも出来たというのに。




< 357 / 421 >

この作品をシェア

pagetop