だから何ですか?
♧♧♧♧
「・・・・はっ?」
思わず咥えていた煙草を落としかけた。
好奇心に素直な自分の性格を呪った事はないけれど、こうして時々思ってもみない衝撃に出会うとさすがに思考も止まりかける。
手に持っているのは自分の会社名の書類じゃない。
むしろライバル社と言うべき社名の書類を食い入るように見つめ、そこに記載されていた名前に見事不動になっていれば。
「社長自らスパイ行為?」
薄暗い部屋、不意に響いた乾いた声と伸びて俺の手から書類を抜いた白く細い腕には衝撃も忘れて恋しさが勝る。
非難の口調を向けてきたくせに、その姿を振り返ればすぐさま重なってきた唇と絡みついてくる腕。
それに応えている間は素直に目の前の存在に溺れ余計な思考は捨て去って。
それでも唇を離し視線を交差させれば浮上したのは今程の衝撃。
「・・・・ミケが戻ってるなんて聞いてないぞ、麗生」
「・・・・・言ってないもん」
「何で言わないんだよ?」
「『何で?』・・・・ライバル社の社長に内部事情バラすほどダメな秘書じゃないから?」
「いや、その秘書の鏡的な意志は尊敬するし賞賛もするんだけどさ・・・」
そうじゃないだろ。と、久しぶりに麗生の在り方に頭を抱えた気がする。
そんな俺を無表情で何が問題だと見つめ上げてくる姿に悪意はないのだ。