だから何ですか?



まぁ、そんな事をしたところで怯む男でもなし憤る男でもなし。


むしろ愉快だとクスクス笑う声を聞きながら苛立ったところで無意味だと自分を宥めて意識を煙草に戻していく。


それは海音も同じくで、特別音を発することなく煙草に意識を戻し、どこと言うところでもない場所を見つめる頭は何を考えているのか。


そんな時間を1分も過ごさなかったと思う。



「なぁ、亜豆って、」


「フハッ、」


「なんだよ?」


「いや、・・・しっかり毒されて忘れられないらしいな。と、」


「不本意ながらな。あの計算高い女にまんまと乗せられ振り回されてるよ」



どうしても今は忘れようとしても彼女への葛藤に満ちてしまっているらしい俺。


しかも一緒に居るのが彼女を訳知ったような男であるから尚の事その疑問を追及するように口から零れてしまうんだろう。


そんな俺に亜豆の名前を聞くや否や噴き出して笑う男の嫌味な事。


結局確認したかった言葉も摘まれてフンッと鼻を鳴らし顔を背ければ、



「亜豆が計算高い・・・ねぇ」



意味深、いや、含みのある口調と声のトーン。


それに意識も視線も引き戻されてもう一度自分の視界に煙草を吸う色男の横顔を映すと。


< 48 / 421 >

この作品をシェア

pagetop