だから何ですか?



「亜豆ぃ、」



溜め息交じりに少し強め。


そんな風に名前を呼んでも立ち止まるでもなく振り返るでもなく。


おい、なんか逆に引かれるぞ、その未練も余韻もない対応。


カツカツと逃げていくヒールの音が遠ざかって行って、追いかけるか迷うも頭を一掻きすると脱力するように椅子に体を投げ出した。


そのまま背もたれに寄りかかり天井を仰いで、『あー』っと抑揚のない声を響かせ残っている不完全燃焼の鎮静。


それを効率よく図るように目蓋を下したのに、期待とは逆に鮮明に思い出す亜豆とのキス。


思い出してしまえば不毛にも変に興奮して虚しくなるのに。



「っ・・・あー・・生殺し。・・・黙って襲えばよかったか?」



そんな危険な発想を口にしながら椅子を左右に回して振って、腕を組みながら捉えたのはパソコンの画面。


保存した時のまま亜豆との合作と言えるデザインが表示されていて、それをしばらく見つめてからキーボードの横に置いておいた携帯に手を伸ばした。


履歴に残っていた名前を拾い上げ、タップするとすぐに耳に動かす。


そうして無機質なコール音を数回耳に流し込んだ直後。



『はいはーい、』


「おい、あの可愛い生き物はなんだ?」


『フハッ、アハハハ、落ちたね 和(より)』



ああ、落ちたよ。


ものの見事にどっぷり落ちてハマったよ。


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